今月の「社長が現場で日々思うこと」は、社長が住宅性能の勉強や年末で多忙の為、又私の得意分野、規矩術の話もあるので私が代わりに書かせて頂きます。
三幸住宅 大澤
今回は伝統技術と最新住宅性能へのこだわりについてお話させて頂きます。
私達は和風住宅専門店としてやらせて頂いています。
むくり屋根の家や置き屋根の家、30度曲がった家などを造らせて頂いてきました。
また、土蔵の修理なども行ってきました。
住宅大工であり、宮大工ではないのですが、こういう住宅を造っていたらお寺や神社の相談も受けることがあります。
本殿や塔などは大変だと思いますが、今まで水屋の柱交換や建具調節、本殿を囲む木塀の補修・板金屋根交換などやらせて頂いてきました。
■水屋~四方転びの柱~
この前、「水屋が風で倒れてしまったから、新しく建てられないか」というお話をもらいました。柱の根元部分が雨で傷んでしまい、台風などの強い風で倒れてしまったのでしょう。
水屋の柱は、四方転びになっています。
柱を、柱半分から1本程度内側へ倒し、各々内側へ力がかかるように小屋組みを支えているので、風や地震などの横の力がかかっても倒れにくい構造になっています。もちろん住宅の様に筋交いや壁(面材)を付けても横からの力には耐えられますが、柱と頭貫、桁梁などの小屋組みだけの構造体で見た目もよく、安定した建物にしようとした昔からの伝統の工法なのです。
垂直に立つ柱なら、長さをとり直角に切ればいいですが、四方転びの柱は垂直ではなく少し倒れているのです。その分長さも変わりますし、切り口も直角に切ったら口が開いてしまいます。また、水平に切った時に切った面が正方形になる様に、柱をひし形にします。
そこで「規矩術」というワザを使います。
指矩(さしがね)だけで、勾配のついているモノの角度や長さをだす技術です。
昔の大工さんは、屋根の部分などで規矩術を使っていました。例えば、寄棟造、入母屋造の隅木で使いますし、簡単なものでは垂木の長さや切る角度を出すのにも使います。「30度曲がった家」の化粧谷木、斜めにかかる垂木掛けでも規矩術を使っています。
今はプレカットが主流で、規矩術を使うことが少なくなってきています。大工さんによっては、造る家によっては、規矩術を使う必要のない家もあります。使わなければ忘れ…いや覚えなくてもいいのかもしれません。
しかし、和風住宅では垂木や隅木を自分達で刻み、見せることも多く、規矩術を使えなければ造れません。
そういう家造りをしているので、四方転びの水屋のお話が来たのかもしれません。
元々の建物の復元新築の様になるのか、今相談中ですが、バランスの良い格好良いものが造れればと思います。
■山門補修
お寺の山門の補修のお話も頂いています。
雨などで腰壁や基壇が傷んできている為、腰壁補修、割れている部分の基壇補修等を相談されています。
直すためには部分的に解体し、補修し元に戻さなくてはいけません。木の組み方を知らないと外すことも出来ません。切ってバラバラに壊すなら話は別ですが…。
お寺や神社も木造建築なので、木造大工の基本が分かっていれば、木の扱いが分かっていれば直せるはずです。そこで、私達もお手伝い出来ればと思います
腰板はケヤキの幅の広い板で、普通には流通していないものです。大きさもなかなか無いうえ、乾燥していなければすぐ使うことは出来ません。そういう特殊な材料に強い材木屋さんに探してもらい、幅80㎝の乾燥しているケヤキを見つけてもらいました。
乾燥させる為には何年もかかるので、本当に希少なものを見つけてきて頂きました。
私達大工だけではなく、材木屋さん、基壇の大きい石を直す職人さんにも協力して貰い、良いものを造れればと思います。
■最新住宅性能の勉強
どんな格好の良い住宅でも、住みにくかったら嫌ですよね。寒い家は嫌ですよね。
断熱性能の良い家であれば、エアコンも小さめのもの、少ない台数でまかなえます。健康にも良くぜんそくなどが…長くなりそうなので、この話はまた今度の機会にしましょう。
そういう性能の良い家を造っているビルダーさんの展示場見学に行ってきました。
埼玉の断熱地域はほぼ5地域と6地域です。
4地域と3地域の福島のビルダーさんの展示場や建築中の現場と、4地域の秩父のビルダーさんの最近建てた御自宅の見学会に行ってきました。
どちらの展示場も暖かかったです。玄関ドアを開けた瞬間から暖かい。エアコンをつければ勿論暖かいのですが、30坪程度でも8畳用(2.5kw)程度のエアコン1台でどの部屋も暖かいです。
それは、断熱性能だけではなく、気密も良いからだと思います。
また、間取りの取り方や太陽光・太陽熱の取り入れ方、蓄熱も考えられています。断熱力を上げるため、無駄な窓はなくし、道路面(確か西面)には窓がなかったです。西日が入るのを防ぐと共に、外壁がキャンバスの様になり、植栽や外構が映えて感じました。
しかし、窓が少ないのに室内は暗さを感じなかったです。
吹き抜けが、光と熱を取り込みつつ、上下階の温度差を少なくする効果もあるようです。
ダクト式の熱交換型換気も各部屋の温度差を無くすのに多少役に立っているのではと思います。外からの吸気を、中からの排気の空気と熱交換して(冬なら)暖まった空気を室内各所にある吸気口へ送ります。という事は、吸気口からは内外の温度差の90%程度熱交換された空気が入ってくるので、室内の温度差は少なくなると思います。
メーカーは「熱交換はするけど、各所の温度差緩和は目的ではないので…」と言っていたと思いますが。
その事はまた勉強していきたいと思います。
ダクト式ではない、ダクトレス熱交換型換気システムも見ました。
この機種は空気清浄機の機能もあり、エアコン程度の大きさです。空気清浄機を床に置くよりは掃除の時楽だったり、家具を置きやすかったりすると思います。
ダクトレスならリフォームでも使えますし、音も静かでした。
理論だけではなく、UA値という断熱性能の数値だけではなく、実際建ててある空間で感じ、住んでいる人の話も聞けてとても良い経験をさせて頂きました。その空間に行くことで、その家の、デザインの良さも感じ学べました。
和風住宅の美しさを、伝統を受け継ぎつつ、最新住宅性能を学び生かし、住みやすい家造りをしていければと思います。
■年末のご挨拶
今年度は学ぶことの多い一年だったと感じます。
2020年改正省エネ法義務化に向け、UA値を計算したり、一次消費エネルギー計算をしたり、ZEHビルダー登録もしました。(ZEH基準を満たしていても、ZEHビルダーじゃないとZEH住宅として認めて貰えません)義務化は「努力義務」に変わってしまったようですが…。
しかし、届出義務でも努力義務でも、住みやすい家を造りたい気持ちは変わりません。
計算上の数値だけではなく、実際の建物も見て感じ、色々なお話を聞き勉強させて頂きました。
来年度も学び続け、学び吸収したものを生かし、より快適に住め、美しい家を造っていきたいと思います。
来年度も変わらぬお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。