社長が現場で日々思うこと

平成30年 5月

今月は「何となく嫌な予感」というお話をしたいと思います。
私自身、自分の仕事という当然の役目として、人様の家を造っています。少しでも良いものを作ろうとする思いはいつも持っているつもりなので、住宅に関する「設計」「性能」「デザイン」「納まり」など、意識的に日々勉強するようにしています。

しかし、勉強するほどこの業界に不安を感じることもあります。

では今なにが一番不安か?というと、住宅業界では国の政策に乗って、従来の家に比べてかなりのスピードで高断熱化が進んでいます。
特にこの「高断熱化」という話の中では、外装に携わる職人さん(瓦屋さん、板金屋さん、左官屋さん、塗装屋さん)よりも、内装業の職人さんの施工がとても大切です。
その中でも大工さんと設備屋さん、最近では断熱材施工専門の業者さんです。
しかし断熱施工業者さん以外の大工さん、設備屋さん達は、住宅の性能がよくなるスピードに知識がついて行ってないのは事実です。
断熱施工業者さんでも、実際に現場で施工する職人さんは個人個人で知識の差は出てしまいます。

これはどうしても仕方のないことです。(※なぜ仕方がないのか?はまた別の機会にお話しします。)その部分を現場で管理するのが現場監督や、工務店で言えば棟梁です。
その人達が全体をチェックしながら仕上げていかなければいけません。

それがまた、なかなか出来ないのです。その理由は・・・。

私自身が住宅施工会社を経営しているので他社の現場監督さんと頻繁に会って話すわけではありませんが、私も他社さんのレベルに凄く興味があるので、そんな機会があれば積極的に話をさせていただきます。
話をさせていただくと、一般的な現場監督レベルでは、室内環境を理論的に分かっている人にいまのところ会ったことがありません・・・。

そうすると、どんな可能性があるのか・・・。

現在、国の政策(※ここではZEHを基準に話をしますが)は、外皮性能:UA値をベースにした考え方です。
ここ埼玉はほぼ5地域という区分なので、ZEH基準はUA値0.6以下です。
この基準を境に補助金をもらえるか、もらえないか、という話にもなります。このUA値というのはすべて計算上の話で、簡単に言うとその数値をクリアーする断熱材とサッシを組み合わせれば、どの住宅会社さんもZEHに対応は出来ます。
しかし、施工側が色々な理論(断熱材の選び方、機密の取り方、換気の方法、結露の理論などなど)をよく分からないまま断熱材をどんどん上げていったらどうなるのか・・・。

少し怖さがあります・・・。

最悪のケースは35年~40年前に北海道を中心に起こってしまった「ナミダダケ事件」(※1)のようなことが起きる可能性はゼロではないと思っています。
埼玉と北海道では生活環境(年間の気温の変化など)が違うので、ここまで大きな問題にならないと思っているのですが、あと5年~10年でぐらいの間で、なんらかのトラブルの要因になりかねないと思って不安になる時もあります。

そのため私達施工側は、家が高性能化するスピードと施工のレベルアップを平行してお客さまに提供できるようにしなければいけません。

私としても日々さらに勉強して悩みながら、一生懸命やっていこうと決めています。


※1 「ナミダダケ」という茸が原因で新築間もない家の床が抜ける、という現象が多発しました。
【ナミダダケ事件】

平成30年 4月

今月は2050年を見に行こう、というお話をしたいと思います。
この言葉は家造りの仕事をしている私達三幸住宅にとっての現在の合い言葉のひとつになっています。
なぜ2050年か?というと私達が生活している現在は2018年、私は43歳(もう少しで44歳・・・)
今年2018年に家を新築しようとして、住宅ローンを35年で組むとすると完済するころには2053年になります。
新築をして住宅ローンを35年間一生懸命働き払い終えた2053年に、近所で新築している建物に性能で大きく劣らない住宅をお客さまに提案しなければならないからです。

これから日本の人口減少は、いままで経験したことがないスピードでさらに進んでいきます。
そのことも引き金になり、既存住宅の空き率上昇が止まらない状況にもなっています。
私自身も現在の日本の家(住宅)に対する考え方はそろそろ大きく変えた方がいいと思います。
欧米、その他の国のように建物に手を加えながら、60年、70年、100年以上住み続けられるように考えて造らなければならないと思います。

100年先と言っても正直想像もつかないことが多すぎますが、2050年を見に行こうという話の中での35年先というのも、私のレベルで予測するのはかなり難しいことです。
この話の中で誰でも考えられるのは、過去を振り返ってみることです・・・。

現在の30代より若い人達にはよく分からない話かもしれませんが、

               (過去)          (未来)
               35年前   いまの自分   35年後
(小学校2年生)8~9歳 <========== 43歳 ==========> 78~79歳(後期高齢者)
       1983年            2018年           2053年

35年前はどんな時代だったのか?

●1983年に流行っていた歌
・「CAT'S EYE」杏里
・「時をかける少女」原田知世
・「め組のひと」ラッツ&スター
など・・・

●1983年にあったこと
・ファミコン発売
・キン肉マンが放送開始(キン消しブーム)
・東京ディズニーランド開園
・三宅島噴火
など・・・

これを見た時に皆さまはどう考えるか、だと思います。私自身は、すべてが同じように古く懐かしくは感じませんでした。

私自身、この中で一番変わったと思うことはゲームでした。この進歩、進化は圧倒的でしょう。
現在ではPS4(VR)・ニンテンドースイッチ・・・当時のファミコンからは比べものにならないほどの進化です。
このことを35年前のゲーム業界で、どれくらいの人が想像出来ていたでしょう。
時代は少しズレるかもしれませんが、携帯電話もすごいスピードで進化を続けて、いまでは電話というより小型パソコンのようになっています。

ではもう一度、住宅の話に置き換えてみます。
近年の気候の変化ということも含めて考える必要があるのですが、私が小学校2年生の時には、エアコンがない家も多くあり、扇風機が夏の暑さをしのぐ主力のものでした。
まだ断熱材も入っているかいないかという適当な時代、サッシも同じで雨風がしのげればよいという程度です。
友達の家はまだ木製建具の家もありました。
それから思うと、2018年現在のZEH基準以上の住宅の性能も、当時と比べるとかなりの進化だと思います。

1970年代、80年代の既存住宅を現在のZEH基準の性能に合わせたリフォームをしようとすると、凄くコストが掛かります。
築35年~40年として、性能リフォーム・耐震リフォーム + 屋根・外壁・水廻りのリフォーム工事も対象として考えると、そのコストは新築の予算とさほど変わらなくなってしまうような例も少なくありません。
こうなると、日本の住宅の建て替え、もしくは住み替えのサイクルは40年前後になってしまいます。

しかし、今私達が生きている時間は2018年・・・
最新の性能を装備しておけば35年後に住まい手(そこに住む家族)が変わっても、少し手を掛ければ少なくとももう1世代住めるような家が出来るのではないかな・・・と私は考えています。
これから住宅の新築を考えているお客さまには、こういった説明も大切なのではないかと思っています。

平成30年 3月

今月は本当によい家造り、ってどんな家造りだろう?(その二)というお話しです。

先月は、家造りを進める際の施工会社(造り手)とお客さまとの関係についてお話ししました。
今月は、家造りをする際に一番大切な、性能についてお話ししたいと思います。

※住宅性能については、少し数値の話をしなければならないのですが、お客さまにとっては「そんなはなしをされても分からない・・・」と思う方が大半でしょう。
なので、深く考えなくても大丈夫です。この話を深く話す時は、私は個別に分かり易く説明をしています。

国が示している住宅の断熱性能の指標は、2020年に外皮平均熱貫流率(UA値)0.87以下、2030年に0.6以下となっています。
外皮平均熱貫流率(UA値)というのは簡単に説明すると、「室内の温度が屋根面(天井面)、壁面(サッシ)、床面(基礎面)を通してどれだけ屋外に逃げるか」
また、「屋外の温度が屋根面(天井面)、壁面(サッシ)、床面(基礎面)を通してどれだけ室内に入るか」を表す数値です。

このUA値が小さければ小さいほど、断熱性能が高いということになります。
このUA値はZEH(ゼッチ、ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準になっていて、これは日本各地の地域毎に区分されています。
ここ埼玉はほぼ「5」地域といわれる区分で、それぞれのUA値は下記の通りです。

・ZEH標準 → 0.6以下
・HEAT20のG1グレード → 0.48以下
・HEAT20のG2グレード → 0.34以下

※補足として、平成30年2月9日に公表されたZEH+の基準は0.4以下です。

これらの基準のさらに上の基準として、LCCM住宅というものもあります。
なお、いま説明している数値は、あくまでも設計基準といえます。設計基準というのは、図面上での計算、ということです。

基本的に施工会社がお客さまにこれから建てようとする時には、計算上のこの数値を提示して話をするでしょう。
お客さまもこの数値の説明を受けて、「自分の家はZEH基準をクリアしているので、性能の高い住宅なんだろう・・・。」と思うでしょう。

※ZEH基準にはUA値以外にもクリアしなければならない基準の数値があります。しかし、いまはまだ個人工務店レベル、個人設計士さんレベルではこの計算すら分かっていないプロ達もかなり多いのが現状です。
なので、お客さまにとってはかなり分かりづらい・・・。

設計提案段階では、この流れで大丈夫だと思います。
しかし、より大切なのがここからです。このUA値の計算数値を現場で100%出せるか、が一番重要です。ここは施工する人間(職人さん)によってかなりの差が出ます。
特にグラスウール、ロックウール系の(ガラス繊維系)断熱材を使う場合は要注意です。
なぜなら、この系統の断熱材は一般的に大工が施工するので、その大工さんによって施工精度にかなりのバラつきが出てしまいます。

ハウスメーカーといわれる会社、地域ビルダー、分譲住宅、個人工務店などの施工会社の木工事に私の大工仲間達が数多く携わっているのですが、その仲間達に分かる範囲で施工内容や現場監督の知識力を聞いても、100%の施工が出来ている会社はなかなかないようです。
では断熱専門の業者が施工するような、セルロースファイバーや現場発泡ウレタンなら100%完璧な施工が出来ているのかというと、それもまた疑問点がある場合があります。

そして、ここがお客さまの死角となる部分です。
お客さまとしては、現場での施工方法まですべて見ていることは不可能です。まして工事工程の中で仕上げ材によってどんどん隠れていってしまう部分なので、施工する人(会社)を信用するしかないのです。
仮にお客さまが毎日朝から晩まで、施工している様子を自分の目で見られたとしても、施工の不良部分を指摘するには専門知識が必要です。

日本の住宅性能は世界基準と比べるとレベルが低かったのですが、だからこそ今急速に性能重視に変わってきています。
これから家を新築して、その家に住む人達(ご家族)の思いとしても、少しでも快適な家に暮らしていきたいというのは万人の願いだと思っています。
だからこそ、これから家を建てようとする皆さまは、カタログの数値や計算上の数値だけで性能を判断するのではなく、その施工に携わる会社の営業さんの知識量、現場監督の知識量、施工する大工さんの知識量のバランスがとれている会社に施工してもらうことがすごく大切だと思います。

ここからさらに詳しいお話しは、また次の機会にさせていただきます。今月もご覧いただきありがとうございました。

平成30年 2月

今月は本当によい家造り、ってどんな家造りだろう?(その一)というお話しをさせていただきます。

私の家造りに対する「良い物を造りたい」という思いは、誰にも負けないという自信があります。
良い物を造るにはとにかく私達(施工会社)とお客さまとで納得がいくまで時間を割いて「トコトン話し合う」という方法で家造りをさせていただいています。
そのため、三幸住宅に家を頼んでもらえるお客さまとの打ち合わせ時間は他社さんの倍以上になります。

そこで、いつもお客さまとの打ち合わせをする際に考えていることは、「お客さまにとって良い家造りとはどんな家造りなんだろう?」ということです。
これはきっと私がこの仕事を完全に辞めるまで、考えても答えは出ないものだろうと思います。
特に私達のようにこだわり住宅を造っている会社としては、施工会社とお客さまという関係になってはいけないということは分かっています。
私達施工会社の役割は、いま、目の前のお客さまが求めている家を「カタチ」にしていくお手伝い、そのパートナーという立ち位置でいなければなりません。

家造りをしようとしているお客さまと私達が向き合った時、これから良い家を造っていくために色々な打ち合わせをさせていただきます。
家の打ち合わせには大きく「目に見える物の打ち合わせ」と「目に見えない(見えづらい)物の打ち合わせ」があります。

■「目に見える物の打ち合わせ」
これは、いまから建てようとする家に住む準備のお話になります。

・お客さまのイメージの中にある、外観、デザイン
・お客さまのイメージの中にある、間取り、大きさ
・お客さまのイメージの中にある、大まかな予算

などです。

■「目に見えない(見えづらい)物の打ち合わせ」
これは、いまから建てようとする家に住んでからのお話になります。

・その土地の日陰、風向き
・耐震、断熱といった計算して出すような性能
・いままでの施工例を踏まえたエアコン室外機、エコキュートのヒートポンプなどの設置場所(近隣対策)

などです。

家造りはお客さまのイメージ「目に見える物」を、施工会社のアドバイス「目に見えない(見えづらい)物」によってより良い家、住みやすい家にすることが、本当に大切です。
たしかに、これから建てようとする家に、長期のローンを抱えて、一生住むのはお客さまです。だからといってお客さまの希望が最優先になってしまっては絶対にいけません。
お客さまと施工会社の関係性は、どちらが上でも下でもなく、常に対等で、施工会社はお客様の家が100%理想に近づくようサポートをしっかりしなければいけません。
そしてお引き渡し後、お客さまの生活が始まってからは、その家を管理という形でしっかりサポートしていく、という関係性を続けていくことが、本当の良い家造りだと思っています。

時には、お客さまのご希望より間取りが少し小さくなってしまっても、性能上その方がお客さまのためなら、一生懸命その部分の説明をして、提案させていただきます。
そのすべては、お客さまがその家に住んでから「本当に良い家が建てられた」という声をいただくための私達の仕事だからです。

お引き渡し後の家の状況、環境などの「目に見えない(見えづらい)物」を、できるだけ分かり易く提案するのが私達施工会社の、一番の仕事だと思います。

平成30年1月

今月は人財についてお話しさせていただきます。

現在(物流・運送業)(飲食業)(販売・小売業)(介護職)その他すべての業種で人財不足が急速に進んでいます。
その人材不足がこの数年特に進んで、社会の経営自体も危うくなってしまっていることを、ニュースを含めて私も肌で感じています。

それは私達、建設・建築業でも同じです。
大きな現場へ手伝いに行くと、60歳以上の職人が半数以上を占め、あと10年経つとどうなってしまうのか?という不安に駆られます。

辛うじて私達三幸住宅としては、川越の工務店という括りの中では平均年齢40代と、業界の中では若い会社です。
しかし人間は1日、1ヶ月、1年と確実に歳をとります。
会社の長である私としては、いままで先代から30年以上家づくりの商売をさせていただいたOB客さまの管理責任もあるので、未来永劫この会社を存続させる努力を日々し続けなければならないと考えています。

そんな中、私達が恵まれている部分もあります。ひとつは毎年工業高校からインターンシップ(職業体験)の受け入れを通して未来の業界の宝である高校生にこの仕事の楽しさ、大変さを話したりする時間があります。

もうひとつは和風住宅専門店という中で、昨年、一昨年と4〜5件ホームページを見たのですが自分も和風住宅をやってみたいという方々から連絡をいただきました。
その方々は「卒業が決まっている学生」「現在はサラリーマンをしている人」「現在大工としてハウスメーカーを手掛けている人」「元宮大工で修行をしていた人」と色々です。

とてもありがたいことですが、大工職人1人を三幸住宅の棟梁クラスまで育てるというのはとても大変です。私としても弟子に入ってきてくれた全員に棟梁まで育ってもらいたいという思いで、本気で向き合っています。そのため同時に2人、3人という人財を採用したり出来ない事もあり、タイミングが合わず私達の仲間に入っていただく事が出来ないことも多くあります。
採用できたとしても半年、1年で本人は努力もせず逃げていってしまう人間もいます。

家づくりは縁のものです。人も縁のものと思っていますので、私達のメンバーから抜けていってしまうということは、私自身とても寂しい気持ちになりますが、それも縁がなかったと思うようにしています。

現在三幸住宅は私も含めて4人の常勤棟梁と、2人の非常勤棟梁の6人がいます。一番若い棟梁は32歳で、みんな生き生きと毎日闘ってくれています。

社長である私は、仕事というのは何の仕事でも、自分が生かされている業界で「こういう事がしてみたい」「こう生きていきたい」と強く思って日々自分自身と闘っていくもの、その気持ちがすごく大事だと思っています。
そして家づくりに対しては「造り手も楽しく」という事を目標として日々努力をしています。

そんな小さな会社ですが、日本家屋・和風住宅に関しては埼玉一番店を目指しています。
中途半端な思いの人間と向き合うのは時間の無駄なので、本気で闘ってくれる人(人財)を私達会社としても、これからも大切に一人一人育てていこうと思っていますし、ぜひ仲間に入ってきてもらいたいとも思っています。

最後に日本一の宮大工と言われた西岡常一(西岡家)の教えを、私なりの理解で紹介します。
「木組みは木の癖組」「木の癖組は職人達の心組み」「職人達の心組みは棟梁の職人達への思いやり」
こういう思いを忘れない人間が、良質な家を造れる棟梁だと思います。
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